2019.11.07
FOB Stowed & Trimmed (FOB ST)
本ホームページ内の“英文契約書作成”で述べた”INCOTERMS”のFOB から続きます。
実務では不可欠な船積み条件であるにも拘わらず、貿易実務や国際取引法の書物に載っていないのがFOB ST (Free on Board Stowed & Trimmed)です。
この条件は、少なくても1船倉(One Hold)に満載に積まれる商品貨物に適用されます。例えば鉄鋼やセメント等で、それらの輸出の際に、買い手が自ら船をチャーターして、売り手の工場の岸壁(当然、保税指定を受けており、通常工場内に税関の出張所も開設されていますが、公共の港ではありません。)に横付けし、売り手の職責を貨物の積み込みのみならず、船内作業である積み付け(荷物の配置、固定、固縛)とそれらの費用負担にまでを拡張してもらうやり方です。この作業には、船のバランスを保つため、積荷の重量配分や荷崩れ防止を本船の一等航海士の指示通りすることが含まれ、荷役業者(ステベドア)は船主ではなく、売り手が自分の費用で雇います。
(重量貨物の荷役には、技術上の要請で船会社が契約した荷役会社が起用されることがあります。その場合は工場内岸壁から貨物を荷主手配で艀廻漕し、公共岸壁で本船への積み込みが行われます。その場合の仕切りはBerth Termです。 )
INCOTERMS のFOBに、「Stowed & Trimmed」 の定義として、Charter Party (傭船契約書)“GENCON” Part II 第5条の文章のCharterer をSellerとし, Owner をBuyer と読み替える規定を売買契約書に盛り込んで使用するのが一般的です。(傭船契約書の詳細は当事務所 email: info@oda-legal.com か社団法人 日本海運集会所 http://www.jseinc.org 電話03-5802-8363へお問い合わせ下さい。)
INCOTERMSでは危険負担が、貨物を本船上に積んだ時、売り手から買い手に移転することになっていますが、FOB ST条件では、売り手は積み込み後の船内での積み付け等が完了するまで、危険負担から開放されないと理解されています。しかし、明文化された規定が無いので、売買契約書に、その旨一行書き加えるのがよいでしょう。
その条文は以下の通りです。
The cargo shall be brought into the hold, loaded, stowed and/or trimmed, tallied, lashed and/or secured by the Seller, free of any risk liability and expense whatsoever to the Buyer.
The Seller shall provide and lay all dunnage material as required for the proper stowage and protection of the cargo on board.
”FOB Stowed & Trimmed その2”へ続きます。