2019.11.22
FOB Stowed & Trimmed その1から続きます。
更に、積み込み日数と滞船料の取り決めを売り手と買い手で行い、船をチャーターする買い手は、船主に対する自分の積み込み日数と滞船料の責任とリスクを売り手にヘッジします。
もう一点の注意事項はこの条件では、ダンネージ(Dunnage) 代が売り手の費用として発生することです。ダンネージとは荷物を在来船に積むときに、荷物の保護と固定のために必要な角材, 合板, ワイヤー、チェーン等の資材費で、荷物の梱包の形状が不安定だったり、弱かったりすると、貨物のトン当たり数ドル掛かります。これが一貨満載の貨物(数千トンから数万トン)だと合計では大変な金額になりますので、この積算と費用計上を間違わないように注意することが肝要です。
この条件では、売り手は船積み条件として、自ら手配して行う積み込みの1日当たりの数量を約束して提示します。これは傭船料(荷役料金を含まない運賃)の高額な外航船を、荷役作業の遅れで滞船させてしまったときのリスクを、売り手が負担するという意味を待ちます。
仮に1日当たりの積高(Loading Rate)を1,000トンとし、取引総量を5,000トンとするならば、本船の停泊期間 (Laytime) は5日間 となります。
これを「Loading Conditions: 1,000 metric tons per weather working day, Sundays and Holidays excepted unless used」 (荷役できる天候の1日当たり1,000トン 日曜祝日を除く) と売買契約書に規定します。お気付きのように、降雨のときは荷役が出来ない在来船の天候リスクは、買い手が負っています。さらに滞船料 (Demurrage) 日額を定めます。
約束された停泊期間5日以内に、積み込み、積み付け作業を完了させないと、荷役6日目から売り手は買い手へ滞船料を支払う義務が生じます。同時に早出し料 (Dispatch Money) も設定して、売り手が約束の日数の満了よりも早く荷役を完了して、買い手が船を出航させられる状態にした場合、売り手の迅速な仕事の結果に対して、買い手から売り手へ、謝礼の意味で滞船料の半額程度の早出し料を支払う約束をすることが、しばしばあります。(時間の起算、計算の仕方など、ルールの詳細は当事務所へお問い合わせ下さい。Email: info@oda-legal.com )荷役のための停泊日数を関係者の間で定めることを、業界用語でランを切ると言います。この語源は「Running Days」だと思われます。
買い手は、本船を FIST (Free In Stowed & Trimmed) もしくはFIOST (Free In Out Stowed & Trimmed) で傭船し、上記のLoading Rate、Laytime, Demurrage, Dispatch Moneyの条件の、売り手を買い手である自社(Charterer)、買い手を船会社(Owner)に置き換えて、傭船契約を結ぶと、滞船料のリスクは、Dispatch Moneyを稼げるかもしれない潜在的な機会と共に、買い手を素通りし, 船会社と売り手の関係にヘッジされるわけです。つまり、買い手は荷役が遅延したら、滞船料を売り手から徴収して船会社に払い、荷役が約束の日数よりも早く完了したら、早出し料を船会社から徴収して売り手に払います。
以上が、FOB ST条件によるバイヤー配船の概要です。