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  • 2021.02.11

    Q&A#3

    Q3.英文契約書が難解なのは何故ですか?

    A3. その理由の第一は、法律用語自体が難しいことです。日本でも法学部出身者以外の方に「物権」だ、「債権」 だといっても、おそらくお分かりにならないでしょう。同様に、アメリカ人でも、「Agreement」と「Contract」の違いを理 解している人は、そう多くはないと思います。
    次に述べなくてはならないのは、法律英語の難しさです。それは各文章に構文が輻輳して長文が作られており、ストーリーの本筋と枝葉を見分けるために多少の習熟が必要なこと、ラテン語の多用と日本語に訳せない単語の存在です。
    しばしば使用されるラテン語の単語には以下のようなものがあります。
    pro rata (比例配分して)、bona fide(善意)、de facto (事実上の)、proviso (但し書き)、vice versa (逆も同様)、in lieu of (の代わりに)、per diem (1日当たり)、ad hoc (特別に)、proforma (仮の)、status quo (今まで通り)等々です。この中には皆様にお馴染みの単語もあると思います。

    日本語に訳せない言葉の代表的のものは、しばしば標準的な契約書の1ページ目に出てくる「in consideration of the premises and covenants herein contained……」の中の「consideration」です。英和辞典には「考慮」と書いてありますが、法律英語では、これは「約因」という、英米法の契約理念の根幹をなす意味を持ちます。ところが、この言葉は日本語の英和辞典には載っていません。普通の日本語で、「見返り」と訳すと意味がつながります。
    また、「instrument」は器具ではなく、証券とか証書のことです。契約書の前文に出てくる「WITHNESSETH 」は動詞「witness」の三人称単数型の古語です。ほかにもよく使用される古風な言葉として、WHEREAS (as と同じ意味で契約書前文の各文章の冒頭に使用されます。)、IN WITNESS WHEREOF (この証として) 等があります。

    また、同じ意味の表現を2回反復する冗長さも面倒です。(例えば、This agreement made and entered by and between A and B……という具合です。)

    ラテン語の多用と同義語の反復は、11世紀のイングランドに於けるノルマン・コンクエスト(侵略王ウィリアム;フランス名 Guillaume)に由来すると言われています。もともとのイングランド国民であるサクソン人の上に、フランス語を母国語とする王朝が支配者として君臨したため、法律英語は2つのルーツの異なる人々が相互に誤解なく理解しあえるように工夫された結果だそうです。因みに英国の今の王朝の祖は侵略王ウィリアムが即位したウィリアム1世で、この方は英語が話せなかった英国王だったといわれています。(詳しくは歴史家にお聞き下さい。)

    他にも法律英語には、アメリカで一般の人から「legal jargon」と皮肉られる特殊な言葉や長文の言い回しが随所に出てきます。このように英文契約書作成にはある程度の専門知識と経験が必要で、未経験の方が作成することにはリスクが伴います。このように、英文契約書は確かに難しく、判読やドラフティングにはある程度の経験が必要だと思いますので、面倒なことは専門職におまかせください。

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