2021.02.23
昨今、海上保険が付保されていない貿易貨物が散見されます。
世界の大部分の国が批准している国際船荷証券統一条約1924(通称)とその後の改定ルール(Hague Visby Rules)を批准した我が国の国際海上物品運送法によりますと、船会社(運送人)は運送に供する船舶の湛航能力(Sea Worthiness) を担保し、航海と貨物の取り扱いに相当な注意義務(Due Diligence)を尽くすことを前提として、次のことから生ずる滅失又は損害については、責任を負わなくてよいことになっております。
一 海上その他可航水域に特有の危険
二 天災
三 戦争、暴動又は内乱
四 海賊行為その他これに準ずる行為
五 裁判上の差押、検疫上の制限その他公権力による処分
六 荷送人若しくは運送品の所有者又はその使用する者の行為
七 同盟罷業、怠業、作業所閉鎖その他の争議行為
八 海上における人命若しくは財産の救助行為又はそのためにする離路若しくはその他の正当な理由に基く離路
九 運送品の特殊な性質又は隠れた欠陥
十 運送品の荷造又は記号の表示の不完全
十一 起重機その他これに準ずる施設の隠れた欠陥
代別人若しくは使用人の故意又は過失が滅失又は損害に関係のなかったことを立証しなければならない。
厳しい自然環境と不確定要素の多い国際関係の中で仕事をする船会社には、御覧のとおり、法的に広汎な免責が認められており、荷主各位のリスクを殆ど担ってくれませんので、貨物保険の付保は必須です。
他方、日本の国際海上物品運送法は、下記条項で本船の「延着」による損失について、運送人が注意義務を尽くしたことを証明しない限り、運送人を有責とする原典(Hague Visby Rules)にはない一語が付け加えられ入ていますのでご注意下さい。もともと延着の原因を特定するのは困難な上に、延着による荷受人の損害をどのように算定するのが、立法の意図が不明確なまま数十年を経過しました。今尚、同じ条約を批准している他の国の実務者の理解を得られていません。
引用:
第五条 運送人は、発航の当時次に掲げる事項を欠いたことにより生じた運送品の滅失、損傷又は延着について、損害賠償の責任を負う。ただし、運送人が自己及びその使用する者がその当時当該事項について注意を怠らなかつたことを証明したときは、この限りでない。
一 船舶を航海に堪える状態に置くこと。
二 船員の乗組み、船舶の艤ぎ装及び需品の補給を適切に行うこと。
三 船倉、冷蔵室その他運送品を積み込む場所を運送品の受入れ、運送及び保存に適する状態に置くこと。