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  • 2021.02.26

    FOBを考える

    我が国では1980年に法令が改定されるまで、(1)輸出は海外の買い手から代金を前払いで受け取るか取消不能信用状(irrevocable Letter of Credit)が買い手の銀行から日本の売り手に届いた後に船積み、(2)輸入の代金の支払いは輸入貨物の船積書類入手と引き換え(当然にL/Cベースとなります。)にすることが標準とされてきました。 輸出代金の焦げ付きと、お金を払っても輸入貨物が来ない詐欺被害を国家が心配してくれていたのです。当時は、それ以外の取引条件は標準外であるとして、都度通産局の許可証が必要でした。L/Cベースによる貿易取引の標準化ということは、当然に船荷証券(Bill of Lading)が代金受け取り・支払いの根拠書類となることを国家が主導していたわけで、日本で貿易に携わる者は、海洋国家である我が国の地政学的合理性と相まって、本船渡しが必然であると考えていました。

    したがって、上記の中でなじみが深いのはFOBとその拡張バージョンであるCFR(以前のC&F)、CIFと、実務上の要請から改良されたと思われるFAS(バースターム建ての運賃
    と整合性があり、在来船による個品運送に適しています。)とFCA(コンテナ積の実態を反映している。)です。

    しかし、我が国で認知されているFOBが世界標準かというと、そうでもありません。特に大陸国家では、FOBを内陸でトラックや内航の川船に積むときも使いますので注意は必要です。例えば、アメリカ合衆国では、FOBは少なくとも8パターンあり、FOBの後ろに続く言葉を吟味しないとその意味が分かりません。 FOBをFreight on Board だと信じている人もいるようです。したがって、我々がFOBという言葉を契約上、使用するときは、例えば“FOB Yokohama (INCOTERMS 2020)“というように、FOBの定義の出典の源泉を示す必要があります。英文契約書作成の際はご注意下さい。

    日本では広く知られているFOB(INCOTERMS )は売り手から買い手への費用とリスクの移転に関して明快かというと、実は問題があります。
    前回の改定で売り手から買い手への費用とリスクの移転は」「when the goods pass the ship's rail at the named port of shipment」から「loaded onto the vessel for transport at the named port of departure」に変わりました。しかし、旧バージョンも現行バージョンも船積みの実際のオペレーションに照らして、非現実的と言わざるを得ません。なぜならば、船積み作業は陸上であろうと船内であろうと、一つの船内荷役会社によって行われます。一般に、その荷役会社とは、個品輸送(たくさんの雑貨)であれば、バースターム(Berth Term、Liner Termともいいます。 )で船会社が、一貨満載の大量貨物であればFI (Free In) 条件で売り手が契約します。その作業内容は下記の通りです。(つまり、Berth Term では積み込みの作業料金は運賃に含まれており、FIでは売り手が直接負担します。) 

    1. 舷側(陸上または艀上)での貨物へHook on
    2. 上記の貨物を吊り上げ、船倉内に置く。(デリックまたはクレーンの操作)
    3. 必要により、船の前後の傾斜(Trim)と左右の傾斜(List)を調整するために、船倉内の貨物を移動させて適正に配置する。
    4. 船倉内で貨物のHook off
    5. 個々の貨物の固縛作業(波浪による動揺で、貨物が損傷しないように防護する。もしも航海中に荷崩れを起こすと本船の安全上、深刻な事態を生じるので、一等航海士がチェックする。)
    6. 固縛のための資材費の負担(ワイヤー、チェーン、ターンバックル、ダンネージ用木材、合板等が大量に必要。)

    上記の作業のうち、船倉内に貨物を適切に配置し、固縛する作業を積み付けといいます。
    上記の作業は、一つの作業会社によって切れ目なく実行されるので、作業の流れの途中で費用とリスクの負担する責任が売り手から買い手に移転することは、実務上有り得ません。
    この続きはホームページからのリンクで FOB Stowed & Trimmed” をご覧ください。FOB契約で買い手に付与された配船権を有効に活用するために必要です。
    カテゴリ:貿易条件

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