2021.02.23
荷受け人が荷揚げ港で船積み貨物の引き渡しを受けるのは、B/L と引き換えに行うのが大原則ですが、貨物を積載した本船が荷揚げ港に到着したとき、L/C発行銀行を経由するB/Lが荷受け人の手元に届いていない事態が起こることがあります。とくに、近年輸送形態のコンテナ化が進み、荷積港と途中の経由港での停泊時間が大幅に短縮されたことにより、近距離輸送ではその傾向が顕著です。そのような場合、荷受人が船会社に保証状(L/G: Letter of Guarantee)を差し入れて、貨物を受け取ることが便宜的に行われます。これを保証状渡しといい、L/C発行銀行の連帯保証付きであることが求められます。銀行の連帯保証のない受荷主単名の保証状はシングルL/Gといわれ、信用力も劣るので一般的ではありません。
銀行の連帯保証付きのL/Gを船会社に差し入れて、貨物の引き渡しを受けた荷受人は、船積み書類が銀行に到着した後、できるだけ早く為替手形の決済を行い、B/L 原本を銀行から入手して船会社に呈示し、L/Gを取り戻します。(船会社はこれをL/G解除と称しています。)そして、そのL/Gを保証している銀行に返納して、日割りで徴収される保証料の加算を終わらせます。
2021.02.23
B/Lの荷受人指定と裏書
L/C取引では、輸出者により呈示された書類にL/C条件との不一致がない限り、万一輸入者が手形代金を支払えなくなった場合でも、発行銀行は海外の輸出者に対して必ず手形代金を支払わなければなりません。
この輸入者からの代金回収リスクをカバーするために、発行銀行はB/L を担保に取っています。したがって、B/L は通常輸入者が貨物を引取るために利用されますが、輸入者が代金決済できなくなった場合には、銀行は担保であるB/L を輸入者へは交付せずに回収し、貨物の所有権と処分権は銀行へ移ることになります。
このため、L/C取引のB/L は、輸入者だけが貨物を引取れるためのものではなく、万一の時には銀行も貨物を引き取り、転売できるようなB/L であることが必要です。
このようにB/L の権利を移転させる(譲渡する)ことができる性質を、B/L の流通性といいます。 B/L に流通性を持たせるためには、荷受人が指図人(order)となっている指図式B/L として作成されることが必要です。
もしB/L が、荷受人に特定の者が指定されている記名式として作成されると、そのB/L は記名された者しか権利を行使できなくなり、流通性がなくなります。したがって荷為替手形の担保とならないために、L/C取引では通常利用されません。
指図式B/L とは、B/L の荷受人(Consignee)欄に次のように記載されている場合をいいます。
① To order of Shipper(単純指図人式)
② To order(単純指図人式)
③ To order of ○○(○○に具体名が入る)(記名指図人式)
ここでの「order」は「指図人」という意味で、B/L の権利者に指図された不特定の者(誰であってもいい)という意味です。
① ②はShipper、つまり荷送人である輸出者によって指図された誰かという意味であり、③は記名された○○という者によって指図された誰か、という意味になります。
いずれの場合にも、指図する者が指図の意思表示をする必要があり、それはB/L の裏面に指図する者が署名する、裏書という方法によって行われます。
一般的な①②の場合には、最初の貨物の権利者である輸出者(Shipper)に、次の権利者を指図する権利があり、具体的には輸出者がB/L の裏面に署名をします。このとき、次の権利者を誰にするかは特に指定しないで署名するため、この署名による裏書は白地裏書(Blank Endorsement)と呼ばれています。次の権利者名の欄が空欄つまりBlankであるという意味です。実際にはB/L 裏面には約束手形等と異なり、裏書欄などありませんので、どこに裏書しても構いません。
B/L 裏面に輸出者が白地裏書をすると、それ以降はB/L を持っている者が輸出者によって指図された者(order)であるとみなされます。したがって、B/L の引き渡しによってのみ貨物の所有権が移転することになります。
一方、③の場合には、次の権利者を指図する権利は○○にあります。したがってB/L の裏面には、輸出者ではなく、○○の裏書が必要となります。
このようなB/L をOrder B/L と言います。
他方、荷受人欄に特定の受取人名を記載したB/L に譲渡不可で流通の機能はありません。このような形式の船荷証券をStraight B/L といいます。
2021.02.23
ON BOARD B/L
L/C取引では、B/L は貨物が確実に出荷されたことの証拠として求められるので、貨物が船積みされたことを証明している船積船荷証券(On Board B/L : Shipped B/L )が要求されます。
在来船の輸送時には元々書式としてShipped B/L が発行されますが、コンテナ船の時に発行される受取船荷証券(Received B/L )は、船会社がコンテナターミナル搬入されたコンテナを受取ったことを証明しているだけで、貨物を船積みしたことの証明とはならないので、このままでは信用状条件を満たすことができません。そのため、Received B/L の場合には、B/L 上に船への積み込みを完了した旨と積込み年月日が記載された船積証明が必要です。
この船積証明のことを、「On Board Notation」といい、B/L下部に船積日が記載され、船会社が署名します。
Received B/L にOn Board Notationが記載されると、Received B/L であってもShipped B/L と同様に扱われ、輸出者は銀行に手形を買い取ってもらうことができます。しかし、“Received”といっても、 船会社はコンテナの内容を書類上でしか知ることがでないのは、前述(ブログ)のとおりです。
2021.02.23
Clean B/L(無故障船荷証券)とRemark(リマーク)
L/C取引では、通常リマーク(貨物の過不足と損傷状態の表記)のない無故障船荷証券(Clean B/L )が要求されます。
リマーク(Remark) とは、船会社に貨物が持ち込まれたとき、その個数に過不足があったり、物品や包装に瑕疵(キズのこと)や水濡れがあった場合にB/L に記載される特記事項のことです。
(リマーク例)
1 case short(1箱不足)
1 case wetted(1箱水濡れ)
1 case broken(1箱破損)
Old barrels repaired contents leaking(古樽、修理あり、中身もれ)
等々
リマークは、その瑕疵が船会社の運送によって生じたものではなく、船会社に持ち込まれた時点で既に存在していたものであることを示します。(運送人の免責主張です。)したがって、このようなリマークつきのB/L に基づく貨物を受取った輸入者は、船会社に運送責任を追及することはできず、直接輸出者にクレーム(賠償請求)していくことになります。リマークのついたB/L を故障付船荷証券(Foul B/L )といい、リマークのついていないB/L を無故障船荷証券(Clean B/L )といいます。
L/C取引では、輸入者が損傷のない完全な貨物を受領するために、無故障船荷証券(Clean B/L )が要求されます。もし銀行に呈示されたB/L が故障船荷証券(Foul B/L )の場合には、買い取り銀行に手形の買い取りを拒絶されます。これは、買い取り銀行が手形を買い取り(立替払い)しても、L/C発行銀行はB/L がFoul B/L であることを理由に支払い拒絶できるため、買い取り銀行が立替払いした手形代金が回収できない可能性があるからです。 そのため、B/Lにリマークが記載された場合、輸出者が「迷惑をかけない」旨の補償状(Letter of Indemnity)を船会社に差し入れて、Clean B/L の発行を依頼する伝統的な商慣習があります。この行為は売買取引の円滑な推進を目的としたものですが、法的な問題があることはいうまでもありません。
現代の個品運送の大半は、輸出者が貨物をコンテナに搭載し、封印した状態で船会社に引き渡すFCL(Full Container Load)という方式で行われます。その場合、B/Lには“Shipper’s Load and Count”という文言が記載され、船会社は船積港に於いて、無傷で受け取ったコンテナの外観に荷揚港で異常がない限り、その中の貨物の損傷と不足に対して責任を負いません。前述の異常とは、船会社の管理下又は船上でのコンテナの破損(但し甲板上に積載されたコンテナの波浪による損傷を除きます。)、水濡れ、屋根の穴と封印のの切断です。
2021.02.23
船会社は一つの積荷に対して、通常B/Lを3通発行され、(変更することもできます。)それぞれのB/L にOriginal、 Duplicate、 Triplicate (又はFirst Original、 Second Original、 Third Original)という印字があるか、又はスタンプが押されます。これは昔、郵便でB/L等の船積書類を輸出地から輸入地に送っていた時代には、常に紛失のリスクがあることを想定していたからです。その為に、船積書類は同じ内容のセットを3つ用意し、数日間隔で3回送ったものです。(余談ですが、現代の国際ビジネス宅配便は、B/L急送の要請が誕生の原点です。その黎明期である1970年代には、クーリエ便と呼ばれ、安全確実且つ迅速に書類を受け取り人に届けるために、本船が出港した直後に、銀行や商社の依頼で、実際にクーリエと呼ばれた伝書人が乗客として飛行機に乗り、手荷物として何件ものB/Lとその関連書類をまとめて目的地へ運んでいました。)
複数発行されたB/Lの効力に順位はなく、1通が揚港で船会社へ提出されると、残りの2通は当然に無効となります。
L/C取引において、B/L はL/C発行銀行の担保となることから、B/Lを入手した別の者がこのB/L を使って貨物を引取ることがないように、通常、銀行は貨物を引取るのに必要なB/L 全通(通常は3通)を要求します。Full Set は全通という意味です。