2019.11.19
海上運賃(Ocean Freight)の建値は次の通りです。
1. 容積によるもの(幾多の変遷を経て、現在は1立方メートルが国際標準の単位となっています。)
2. 重量によるもの(幾多の変遷を経て、現在は1Metric Ton/1,000KGが国際標準の単位となっています。)
3. Revenue Tonによるもの(Frieght Tonともいいます。当該貨物の容積と重量を測り、立方メートルとMetric Tonの大きい方を運賃計算の単位とします。これが個品運送では一般的です。)
4. Unit 当たりとするもの(コンテナ、プラント、大型機械等に適用します。)
5. 価格によるもの(Ad Valorem Freightといいます。希少金属や美術品等の高価貨物は、その価格に一定のパーセントを掛けて運賃を決めます。この建値を適用すると船荷証券の裏面に書いてある運送約款の一部が不適用となります。)
Berth Term(バースターム):
船会社が積港での積込費用から、海上輸送を経て揚港での荷揚げ費用までを負担する条件です。その責任範囲は“Tackle to Tackle”と俗称される積港の船側で貨物に本船Derrick(荷役機械)のHookを引っ掛けたときから、揚港で貨物を岸壁か艀の上に置きHookを外すとき迄です。Liner Term ともいい、在来の定期船で多く使用されます。船会社が荷役会社を手配するので、艀廻漕されて、本船にAlongside(接弦)される大口貨物にも、Godown (これは名詞です。)と呼ばれる港の保税上屋で船会社の代理店が荷受けをし、まとめてトラックで船側へ運ぶ小口貨物にも対応できます。この場合、Shipper (荷主)はトラック代を作業会社に払わなければなりません。
Free In (フリーイン):
積込費用はShipper が荷役会社を手配し、当然に費用を負担し、船会社が負担しない条件を、船会社から見るとこの言葉になります。荷揚げ費用は船会社が負担します。
Free Out(フリーアウト):
船会社が積込費用を負担し、荷揚げ費用は荷受人が負担する条件です。
Free In & Out (フリーイン& アウト):
船会社は積込費用も、荷揚げ費用も負担しない条件です。
備考:上記のInは積込み、Outは荷揚げを意味します。
FCL(コンテナ輸送)
コンテナ船の運賃の建値も、本船への積み込みと目的地に到着してからの作業が船会社によって行われ、その費用が運賃に含まれているいう意味でBerth Term の類型と言えます。但し、その仕切り場所が船側ではなく、船会社のコンテナヤード(CY)内となります。
そして、荷主が空のコンテナを借り出して自社の工場や倉庫で輸出商品を積み込み、船社は封印された中味入りのコンテナをCYで受け取って船に積んで運ぶ輸送形態をFCL(Full Container Load)と言います。 昨今、殆どの遠距離のコンテナ輸送はFCLです。FCLではコンテナの中味を書類でしか知ることが出来ない立場の船会社は、貿易取引の決済の担保となる船荷証券(Bill of Lading)の貨物明細欄にUnknown Clause (不知条項)と呼ばれる“Shipper’s Load and Count” と”Said to contain xxxxxx(品名)” を記載して発行するのが通例となっています。その目的はもちろん船会社の免責の主張です。通例、FCLの建値はコンテナ1本当たりとなっています。これは船社に一定量の貨物を一定期間保証する特定荷主に対して、船社が割安運賃を提供する双務契約です。しかし、制度の基本は商品の運賃負担力(つまりRevenue Ton当たりの価格が高いか安いかです。)に依拠した品目別運賃表(Tariff)です。
LCL(コンテナを利用する小口貨物輸送)
コンテナ輸送の形態には、船会社が多数の小口貨物を指定の倉庫で荷受けして、コンテナに相積みする形態があります。それをLCL (Less Than Container Load)と言います。しかし、大手の海運会l社の中にはLCLを自営せず、系列の物流会社等に任せている事例もあります。
2019.11.14
英国年金ホームページの本文に加筆しました。今回は現在英国に赴任中の皆様を対象とした記事もあります。
2019.11.07
FOB Stowed & Trimmed (FOB ST)
本ホームページ内の“英文契約書作成”で述べた”INCOTERMS”のFOB から続きます。
実務では不可欠な船積み条件であるにも拘わらず、貿易実務や国際取引法の書物に載っていないのがFOB ST (Free on Board Stowed & Trimmed)です。
この条件は、少なくても1船倉(One Hold)に満載に積まれる商品貨物に適用されます。例えば鉄鋼やセメント等で、それらの輸出の際に、買い手が自ら船をチャーターして、売り手の工場の岸壁(当然、保税指定を受けており、通常工場内に税関の出張所も開設されていますが、公共の港ではありません。)に横付けし、売り手の職責を貨物の積み込みのみならず、船内作業である積み付け(荷物の配置、固定、固縛)とそれらの費用負担にまでを拡張してもらうやり方です。この作業には、船のバランスを保つため、積荷の重量配分や荷崩れ防止を本船の一等航海士の指示通りすることが含まれ、荷役業者(ステベドア)は船主ではなく、売り手が自分の費用で雇います。
(重量貨物の荷役には、技術上の要請で船会社が契約した荷役会社が起用されることがあります。その場合は工場内岸壁から貨物を荷主手配で艀廻漕し、公共岸壁で本船への積み込みが行われます。その場合の仕切りはBerth Termです。 )
INCOTERMS のFOBに、「Stowed & Trimmed」 の定義として、Charter Party (傭船契約書)“GENCON” Part II 第5条の文章のCharterer をSellerとし, Owner をBuyer と読み替える規定を売買契約書に盛り込んで使用するのが一般的です。(傭船契約書の詳細は当事務所 email: info@oda-legal.com か社団法人 日本海運集会所 http://www.jseinc.org 電話03-5802-8363へお問い合わせ下さい。)
INCOTERMSでは危険負担が、貨物を本船上に積んだ時、売り手から買い手に移転することになっていますが、FOB ST条件では、売り手は積み込み後の船内での積み付け等が完了するまで、危険負担から開放されないと理解されています。しかし、明文化された規定が無いので、売買契約書に、その旨一行書き加えるのがよいでしょう。
その条文は以下の通りです。
The cargo shall be brought into the hold, loaded, stowed and/or trimmed, tallied, lashed and/or secured by the Seller, free of any risk liability and expense whatsoever to the Buyer.
The Seller shall provide and lay all dunnage material as required for the proper stowage and protection of the cargo on board.
”FOB Stowed & Trimmed その2”へ続きます。
2019.10.17
旧聞に属する話ですが、新聞報道によると順調に進捗していたインドネシアへの高速鉄道のインフラ輸出の商談が、突然取り消しとなり、その数週間後に、突然プロジェクトが復活し、地質調査などを実施した形跡のない中国が、国の保証免除を餌にして受注したそうです。 日本がインドネシアヘ提出した技術情報が中国に流れた疑いが濃い、との推測も付け加えれられていました。
この記事を読んで、小生も自分の会社員時代の経験を思い出しました。 それは日本の政府が援助物資として現物無償プラス補助金(海上運賃と現地での工事費)付きで払い下げる海上コンテナ数百本分の分解された災害被災者用中古仮設住宅数千軒で、インドネシア国は日本の窓口代理人を通じて受け取る契約をしました。 しかし、彼らは補助金だけ取って、住宅の入ったコンテナは受け取らず、日本の港に放置しました。 この間、彼の国の大統領は、ハビビ、ワヒド、メガワティと3人が入れ替わり、これに伴って役所の上層部も交代し、事態は全く拉致があかず、日本側の泣き寝入りとなりました。正確にいうと訴訟では勝ちましたが回収はゼロでした。このように国際援助をもらう国が、援助する側を手玉に取るのは、全く苦々しい思いです。 甘やかし過ぎた結果でしょう。 一番危ないビジネス相手は途上国政府だということを若いビジネスマンの皆さんは、肝の命じて欲しいと思います。
2019.10.14
かつて、私は会社員時代に米国企業の在日支社の総務部で、オフィスの移転を計画から実行まで担当したことがあります。個々の人間の価値観が関わって来る仕事で、色々苦労はありましたが、約半年で計画案を纏め上げ日本支社長の決済をもらいました。そして、最後に移転先候補の事務所の賃貸借契約書を、法律文書専門の翻訳家に英訳してもらい、移転プロジェクト正式承認申請書に添付して本社に送りました。すると本社のGeneral Counsel (企業内弁護士)が「日本支社の新事務所リース契約書の契約条項を審査したが、そこには貸し手の権利と借り手の義務だけが書かれており、このような一方的な契約条項は認められない。」と言ってきました。こちらは初めての経験だったものですから、大慌てで日本支社の法律顧問の先生(弁護士)の所へ駆け込みました。 すると先生が「我が国では、借り手の権利は個別の法律の強行規定で保護されており、契約書にいちいち謳う必要がない。よってこの契約書は妥当で何ら法的なリスクはない。」という意味の意見書を英語で書いて下さったので、それを本社に送り、あちらの弁護士を黙らせることができました。のちに国際法務の経験を積むにつれ、この小さな出来事が、実は日米の法体系と法の文化の違いを象徴する重要な意味をもっていたことに気付きました。つまり慣習法・不文法主義を採るあちらの国では、決まりごとや双方の権利・義務はすべて契約書に書き込んでおかないと、後日意見の相違が生じたときに、自分達の立場を主張することが困難であり、それが事実上、国際スタンダードになっているため、日本のルールを知らない米国本社の弁護士は、日本スタイルの契約書に当初NGを突きつけたというわけです。